石沈みて木の葉浮く

石は沈みて木の葉浮く

イラスト文章 つれづれ 学生

田舎のカスライフハック

 年賀状というものが好きである。

 小学校の頃から、ひとから貰ったハガキは縁切りした友人のものも含めて全て箱に入れて残している。去年は死んでいたので送れなかったが、できればこの年賀状廃れの現代においても私は送り続ける立場でありたい。

 実は今年は描いた。絵柄が思いつかなさすぎたし、「そんなに上手くないひとがいいソフトだけ使ってガンバりました」みたいな感じになった。

f:id:AgateLastone:20220101103331j:image

 家の前の風景だと描いたが、見た目の綺麗さ重視でめっちゃフェイクを入れたので、特定は意味をなさないゾ!(この角度から見える山、実はそんなに雪かかってないし)

 

 思い返せば、小学校の頃が、一番“年賀状”流行りしていた(私の中で)。

 文通とファックスも流行っていたのだ(私の中で)、総合的に『ひとの住所に紙を送る』という行為そのものハマっていたと思われる。 父からインクジェットのハガキを譲ってもらい、鉛筆で絵柄を描いてクーピーで塗った。インクジェット紙に鉛筆を使うと消しゴムは黒鉛をまるで回収できないので、消したい時に地獄であるという知識はここで得た。

 親戚友人恩師など多い時は二、三十枚描いたが、全員絵柄とコメントを変え、絶対被らないようにした。大抵干支の動物を何らかのウケ狙いか、送り先の人の属性に合わせた図柄(ピアノの先生ならピアノなど)を描いた。

 中学に上がるとアドビイラストレーターを父が使わせてくれた。父は毎年あのイラレで年賀状を描いたり日曜大工の設計などしていたが、使うのに金がかかるのを最近知った。Mac常置のフリーソフトじゃなかった……よくもまぁ中学生のクソガキにそんなもん使わせてくれたな。

 その時は確か、拙いながらもベクターレイヤーで馬を描いた。ベクターマジで難しい。完全にラスター派になったので多分二度とベクターは使わぬ。

 高校に上がるとスマホが解禁されたので、そっちのお絵描きアプリを重宝した。今はiPadとpencilを得たので、完全に持て余しつつ使っている。

 

 さて、タイトルの田舎のカスライフハックについてだが、絵柄周りの云々ではない。

 住所、だ。

 今は殆ど縁が切れてしまったものだが、限界集落に住む子供達にとって住所は───「番地はほぼ意味をなさぬもの」だったのだ。

 

『○○県○○市○○区□□○○町○○ **-* 石澄香様』

 は、

『□□○○町 石澄香様』

 で届く。間違いなく。郵便番号も必須でない。

 

 つまり『町の名前』と『苗字』さえあれば届くのだ。番地?知らない子ですね。

 年賀状だとかいっぱい住所を書く必要のある場面において、しかも色々不慣れで拙い小学生にとって省略行為は必至。

 だって『○○町に住む◇◇さん』とか、田舎の者達は全員把握しあってることなんだもの。怖。

 もしかしたら宛名すらタダの『石澄ちゃんへ』であったとしても、ちゃんと届くだろう。閉鎖的な田舎は苗字が同じで別に親戚関係ではない一家が同じ地域に何件かいらっしゃる、というようなこともあるので一応下の名前は書くべきだが……私の一家は“都会からの余所者”で、苗字は誰ともかぶっていなかったので多分これも大丈夫だったんじゃあないかな。

 なくても運が良ければ郵便屋さんは家族構成と共に子供のお名前も把握しておられるので、わんちゃん届くぞ。怖ヮ。

 今でも多分、県なし市なし番地なしで送っても郵便番号は書いておけば問題なく届くと思う。しかし私にはあの辺の友達はもういないので、このライフハックも使うことはないだろう。

 

 そういえば一度、とある子から送られた手紙が全く届かず、それのせいで色々あって縁を切られたことがあるな。

 その時のその子が書いた宛名はこうだ。

 

 『○○町 こうちゃん』

 

 逆によく(最終的には)届いたな