石沈みて木の葉浮く

石は沈みて木の葉浮く

イラスト文章 つれづれ 学生

晴天、パン祭り、落ちこぼれ

 朝早くに起きてグラノーラを食べて、洗濯を回して干して掃除機をかけて、まともに着替えて家を出た。昨晩は早めに寝たというにも関わらず、2、3時間で眠剤を貫通して中途覚醒するほど緊張している。弱過ぎる。目が覚めた時の何ともいえぬ『全身の細胞が漠然と活動を拒否している』感覚。

 どうしてこうなった? 1年以上引き篭もって今日からお大学に復帰するからである。アーア

 とはいえ朝9時過ぎの日光を浴びながら快晴の下歩くと、何処となく全身の細胞は「それで正解だ」と頷いているような気がした。やはり人体は規則正しく動かした方がいいらしい、と動かした時だけ再確認する。多分夜になったら疲労で死ぬるのだが、それが正解なのだ。『寝たら明日になってまう……』『今日何もしてないのに今日が終了してしまう……』と思いながら夜更かしするよりよほど健康にいいに違いない。

 

 しかしながら桜舞う綺麗な景色の下、楽しそうな大学生達が楽しそうに団子になって楽しそうに喋る声を聞くと怖くて怖くてあまりに精神の健康に悪い。自意識過剰なのは重々承知しつつ、全員が留年生たる私を嘲笑している気がしてくる。弱過ぎる。履修説明会の教室から聞こえてきた談笑で頭痛がしてきた。

 この構内、あまりに大学生が多過ぎる。お前も大学生じゃい!

 彼らの誰とも顔見知りではない。友人にはなりたくないが、退学すると決めた時にあらゆる大学関連の人間関係を九割以上切ったので、私はあまりに情報弱者が過ぎる。教授がボソリと言った集合場所を聞き逃せばそれで終い、学生間の講義情報共有も受けられない。教授側は基本的に『学生達がある程度交友関係を持ち合っていること』を前提としている部分がある。ぼっちの真の恐ろしさとは此処だ。私はとにかく此処が怖い。

 正確には授業はまだ開始していないが、履修をすべく私は己の成績を見返してみる。必修をビビるほど落としている。そりゃそうだ年明け直前から大学行かなくなったんだから、それまでどれだけ真面目やってようが期末試験を受けていない以上単位を貰えてるわけがない。……いや一個だけ期末受けてないのに単位貰えてる上に評定が『良』の奴があった。なんだコイツ……? 中間試験とプレゼン一回しかやってないが…… 既に一年延びている以上、せめてスムーズにあと二年で卒業までこぎつけたい限りだが、色々要件及び自分の能力を鑑みると本当〜〜〜に嫌な予感しかしない。一年半前でもあんなにも私はカスで、更に一年引き篭もって脳の皺が伸びきった今こんなのできるわけないじゃない。かと言って学生続ける選択をした理由の数々はよく覚えてはいるけども。嗚呼どうして私は頭が悪いのか、この大学という集団内で落ちこぼれなのか。やっても意味がないと分かりきった自問が元気いっぱい息を吹き返す。見上げすぎて後ろに転倒するほどに高いプライドの山。

 ア〜ア、かつては教免を取りたかったんよなぁというのを思い出した。一年生の時に発狂しかけて諦めたヤツだ。特別教員志望ではなかったし、今も正直教員志望ではないし、この世で一番ブラックな職業の一つが教師だと私は心底思っている。が、都合の良いことばかり思い出すのが今という瞬間であり、私は『ア〜高校の時の恩師にちょっと憧れてたなぁ』だとか『就職に便利だったのになぁ』だとか、『教育関連の講義は凄く面白かったのなぁ』だとか、そういうことに思いを巡らす。

 教免を取るのをやめたのは、ある講義の教授に対し個人的にブチブチブチにブチ切れたからだった。日本語が崩壊し文法が敗北し解説の殆どが「えー」になるような教授は割といるものであるが、かの教授はその比ではなく、嗚呼そうだ思い出した、

「人間としてこんなカスにも満たぬレベルの『講義』しか出来ん教授から単位を得ないと取られんような教員免許など要るか」

 とぶん投げたのであった。

 これだけ書くと本当に私がただ短気なる阿呆なだけであるが、正気を保てぬほど“合わない”人間だったのだ、かの教授は。回避できるものは回避すべきであると私は思う。回避したいものとイヤイヤ付き合っていられるほど人生長くないし暇ではないのだ。大ブーメラン。

 

 チクショ〜泣きたいくらいネガティブなのにいい天気で風が爽やかで日が暖かくて緑がきれいで桜が舞ってる上に、○マザキのパン祭りに人生初挑戦という変なことをしているので面白いほど情緒が上下している。

 

  石澄香

 

【Today's 好きなもの】

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