石沈みて木の葉浮く

石は沈みて木の葉浮く

イラスト文章 つれづれ 学生

ルネスタ怪文

 

 雨音

 雨粒が屋根を叩く音 それが流れて落ちてくる音 雨粒が窓を叩く音 地面を叩く音

 

 寝床から起き上がる

 枕がない シーツは洗濯されたてええ香り 煎餅になっていない掛け布団

 

 ドアを開ける

 分厚い木 金色のノブ 洋風の洒落たデザインなもの

 

 階段を降りる

 螺旋状 犬の乗降補助の滑り止め付き 少し空いた窓から大きくなる雨音 階上から聞こてる誰かの咳 階下で回る誰かの乾燥機

 

 居間

 犬 ソファ 犬の毛 テーブル 犬 壁のフック 犬の毛 犬の毛 フックにかかった回収し損ねの私の鞄 犬 犬の毛

 

 冷蔵庫を開けてちょっと牛乳飲んだ

 雨の音 誰かのいびき 犬の迷惑そうな視線 電気つきっぱなしの廊下 暗い居間 アー実家 数年前まで当たり前に此処で生きていた場所 常に自分以外の人間の気配がする

 帰ってきた先の家に“誰もいない” ことに憧れて、というか逃げたくて望んで物事がトントンと上手いこといったが故の現状であるが、毎度この夜半の暗い居間の雰囲気に息をつく自分がいる

 

 鞄から出した眠剤を今日は二種飲んでみた。

 襲う『実家の安心感』。いつもいつもよりもここでの寝起きがいいのが腹立たしい。ここから離れなければここでQOLの高い暮らしを維持できるのだろう、そう考えては湯船の中で現住所に帰るのが面倒に感じ、そう感じる自分を軽蔑する……を毎度繰り返している。実際実家の方が寝起きが良く、朝起きれば牛乳と食パンとトースターとすぐ使用できる食器があり、こういうのは普段の一人暮らしの中ではこうはいかない。

 ちょっと母に向けてジャブを繰り出す姉。スルーする母。無言の父。ヒヤヒヤする私。

 こういう思いをするのが嫌なんだよな、と思い出す。これについて前にクソ姉は『貴様が気にしなきゃいい』と吐かしよって、冗談抜きで刃物を振り回してやろうかと思うほどに傷ついた私であったが、気にしなきゃいいなんて暴力的な台詞は人に言ってはならない。そう簡単に自身の心を動かせると思うな、他人の心に指示できると思うな。

 心とは、そこに“有る”から“有る”ものだ。

 ゆえに

 

  ◆◆◆

 

 上記まで書いた時点で眠剤が自我を破壊していた。

 変な操作して投稿しなくてよかった。しかし『下書き保存』ボタンを押すのに少なくとも五回くらい失敗した記憶がある。さっさと意識を絞め落としたいためと、偶然持ってきていた二種の眠剤を久しぶりに飲んだが強い強い。レゴブロックで出来た『自我』という作品を横から挟んで圧力をかけて、雑に、半ば強引に壊すように眠ってしまったらしい。

 まぁ冷静な結論で言うならば……実家で寝起きがいいのは何のことはない。

 マンションにある俺の寝具が合っていない

 柔らかすぎるのだ。一人暮らし開始時にも『ちょっと柔らかい気がするな』と感じていたが、寝具問題からずっと目を逸らしていた。枕がないせいかと思い(それまで枕ありで寝たことがない)無印で適当〜な枕を買ってみて、それで“改善したのでは!?”などと思ったりもした。が、やはりダメなのだわ、柔らかすぎるんですわ。

 まぁ車も最近得たことなので、ちょっとホムセンでクソデカベニヤ板でも買ってこようと思う。

 後半期も適当に生きるぞ〜

 

  石澄香

 

【好きなもの】

 ガラスに残る犬の濡れた鼻の痕跡